同じようなことを言っているのに、「○○さんは優しい」「○○さんはキツい」と言われてしまうことがあります。 どうしてでしょう? 今日は、みなさんの声の中から、ブリキタイプのAさんのお悩みを例に考えてみましょう。
僕は、介護ヘルパーの仕事をしています。
なかなか、利用者の方に
心を開いてもらえません。
楽しそうに話しをしている
他の職員がうらやましくて・・・
Aさんは、とても真面目で性格も大人しく、声を荒げたり、キツい言い方をする人ではないようです。でも、利用者の方と会話が続かず、Aさんは誠実に話しかけているつもりなのですが、相手が途中で黙り込んでしまわれるとのこと。おふたりのやりとりを伺っていると、こんな会話が見えてきました。
会話の続きを想像してみよう
靴下をはく前に靴をはきたがる
その1
利用者: 靴、はきたい。
Aさん: 靴? 靴下からでしょう。
靴下はかないと、靴、はけないでしょ。
利用者: ・・・・・
お気に入りの靴なのでしょうか。ご高齢の利用者の方にはよく見られる光景です。Aさんの言うことは合っていますよね。声のトーンも穏やかに話しています。ですが、会話はここで終わってしまいました。Aさんの言葉のあとに続くはずの相手の「・・・・・」は、どんな言葉だったのでしょうか。
会話は、あなたと相手と、どちらの言葉で終わっていますか?
もしも、ここで、Aさんの言うことが正しいと相手がわかったとしても、そこに続く言葉は「ごめんなさい」という謝罪の言葉です。それを飲みこんでしまうと会話は続かなくなります。
では、こんなふうに言ってみるとどうでしょうか。
その2
利用者: 靴、はきたい。
Aさん: 靴? はきたい? ええ、はきましょう!
その前に、靴下をはいて、それから靴をはきましょうね。
利用者: うん、わかった。
結論は、さきほどと同じです。靴下より先に靴をはくことはありません。ですが、その1は、靴をはきたい利用者の方の気持ちより、正論が勝ってしまっています。正しいことを相手に気づいてもらうことは大切ですが、正しいことを言うときは、それは、相手を謝らせてしまうことだということも同時に心得ておきたいことですね。
その2は、正しいことは伝えますが、まず、利用者の方の気持ちをうけとめて、先に肯定しています。これによって、同じ結論に至っても、相手を謝らせることなく会話をすすめることができるのです。
2つのパターンを比べてみましょう。
そして、あなたの言葉に続く、相手の心の言葉を想像してみて下さい。
相手の気持ちを受けとめる
その1
利用者: 靴、はきたい。
Aさん: 靴? 靴下からでしょう。
靴下はかないと、靴、はけないでしょ。
利用者: (あ、そうだった、ごめんなさい)
その2
利用者: 靴、はきたい。
Aさん: 靴? はきたい? ええ、はきましょう!
その前に、靴下をはいて、それから靴をはきましょうね。
利用者:(うん、わかった)
相手を否定せずに同意をうながす
ダメなときにねだられた
その1
利用者: それ、とって。
Aさん: 今はだめですよ。
利用者: はい(怒られた・・・)
その2
利用者: それ、とって。
Aさん: 後にしましょうか。
利用者: うん(いいよ、あとで)
相手のせいにしない
お茶をこぼした
その1
Aさん: あっ! お茶、こぼした!
〇〇さん! 服、濡らしたんじゃない?
利用者: 濡らしちゃった(ごめんなさい)
その2
Aさん: あっ! お茶がこぼれた!
〇〇さん! 服、濡れませんでしたか?
利用者: 濡れちゃった(でも、大丈夫、心配しないで)
会話は言葉のやりとりです。会話のゆくえを、一度考えてみましょう。
最終的に、あなたは相手に感謝されていますか?もしかしたら、会話が続かなかったのは、知らず知らず、相手に謝らせていたのかもしれません。